人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『龍馬デザイン。』読了。

昨年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』に、「人物デザイン監修」として参画した、
柘植 伊佐夫氏の足掛け3年にわたる奮戦記です。
柘植さんはもともと福山雅治さんのヘアメイクをはじめとするトータルスタイリングを
長く担当してきた人で、そのつながりで福山さんに大河参画を依頼されました。

最初は福山龍馬だけの担当と考えていたのが、
福山さんを一番輝かすためには作品全体をトータルで輝かさないといけない、ということになり、
作品に登場する人物、有名無名を問わずすべての登場人物(400人以上!)の
衣装、メイク、鬘などをはじめとする総合的なビューティデザインを統括することになったそうです。
この「人物デザイン監修」という仕事は、
70回に渡るNHK大河史上、『龍馬伝』で初めて誕生した職域なのだそう。

私は映像美術にとても興味があり、
この本も大河ドラマの美術面が詳しく描かれているのかなあと手に取りました。
その予想は裏切られず、例えば衣装ひとつとっても、
「演じる歴史上の人物の、現存する資料+演じる役者さんのパブリックイメージ」を
繊細に考え合わせながら、衣装の色や柄、デザインを決めていきます。
もちろん現代ドラマではありませんから、着物の反物を集めるところから始めるわけです。
こういう仕事を400人分(群集もあるから実際にはそれ以上!)担当するのですから
想像を絶するほどの仕事量です。

さて、この柘植さん。
実はもう1つ役目がありました。それは
「NHK大河に変革を引き起こすこと。
既存の大河ドラマの方法論にのっとってきた扮装表現、
およびぬるま湯のような既得権益的構造をぶっ潰すこと」。

平たく言うと、「サラリーマン的スピリッツに浸りきっている
NHK大河のクリエイティブ部門を外から変革してくれ」、ということらしい。

1つ目の仕事だけでも大変なのに、
2つ目の『裏仕事』まで請け負っちゃった柘植さんは、監督から「パンク・ツゲ」と呼ばれるほどに、
NHKのベルトコンベアー式制作方法論に、バシバシ駄目出ししていきます・・・・。

いやあ、ホント面白かったです。
久しぶりに「仕事とは?」を考えさせてくれる本でした。
柘植さんは50歳くらい。映画『おくりびと』『十三人の刺客』とかにも参画してきた
一流のプロフェッショナルなんだけど、めちゃくちゃ熱いし青い。
『龍馬伝』に没頭するために他の仕事を全部断るんだけど、
『大河だけに没入していると自分の経済は先細る。それもそろそろ限界に来ている(中略)どうなってしまうのだろう』と本音も吐いちゃう。
過去に例のない仕事、過剰なハードワークの日々のなか、
宗教とか哲学とかスピリチュアルとか、そういうもののアシストが必要にもなってくる様子も伺えます。
テレビの裏側を見たい人はもちろんなんだけど、
仕事がマンネリ~とだらけちゃってる人にとって(→わたしだ)
カンフル剤になりそうな本でした。
こちらにインタビューあり。めっちゃお若い!かっこいい!

『龍馬デザイン。』読了。_b0183613_1822227.jpg

by fenmania | 2011-01-21 18:27 | BOOK