カテゴリ:映画・演劇( 34 )

大人計画「ふくすけ」観てきました。

先週、大人計画(松尾スズキさん主宰の劇団。クドカンやアベサダちゃんが在籍)企画の
「ふくすけ」という舞台を見てきました。
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出演者は松尾さんにアベサダちゃん、古田新太、
多部未華子、平岩紙、そして大竹しのぶetc。

大人計画の芝居は、とてつもなくブラックで、
観るのがしんどい作品もあります。
この「ふくすけ」も、母体の薬害で福禄寿のような畸形頭に生まれついた「ふくすけ」(アベサダ)を中心に、
畸形を好むマッドドクター(松尾)、ふくすけを見世物小屋に売るジャンキー、その盲目の妻。
新宿を仕切る魔女のような三姉妹は不発弾をコレクションし、
彼女らの黒幕(大竹)は躁鬱を繰り返し、10年以上不倫を重ねた末に夫から出奔した過去をもつ。
その純愛の夫(古田)は妻を捜しに新宿にやってくるが、
彼は吃音で、小さい頃からいじめを受けていた。

・・・・と、まあ、壮絶なタブーだらけの設定。

畸形、マッド、盲目、吃音、と置き換えてはいますが、
舞台ではそのものずばりの放送禁止用語ががんがん飛び交い、
弱者と強者はシーソーのように入れ替わり、どちらにしても浮かぶ瀬はない。
そして最後は、「純愛の夫」として一番まともに見えた人間が、一番ひどいことをやってしまう。
(もしかしたら夫の「妄想」かもしれないけれど)
そういう、暗いお話。

テレビ、新聞、雑誌などのメジャー媒体では、
要注意言語をピックアップし、マニュアルを作り、
重箱の隅をつつきまくってそれらの言葉を撲滅してきました。
その片隅にいる私も、別に違和感なく「言い換え」を全うしてきました。

大人計画のお芝居は、そのクリーンな世界とは対極に見えるけれど、
結局は、「言い換え」をする時点で、その「きたない言葉」を
私たちは思い浮かべているのにね。
それを言うか言わないか? 

いじめは「当人がいじめられたと思ったらいじめ」
セクハラは「当人がセクハラだと思ったらセクハラ」。
それは重々大人の論理として分かっている。
だから、その言葉を聞いたら「気分を害する」人が1人でもいたら、それは撲滅!ってことになる。

かたや、芝居。河原者の時代から芝居は解放区であったのだけれど、
そうは言っても一興行で何万人も動員するメジャーな劇団が
メジャーな劇場で堂々と放送禁止用語を言いまくる。

いい、悪い、とかの話ではなく、この落差はいったいなんだ、という気持ちがします。
芝居の特権。唐十郎の信奉する「特権的肉体」ゆえに許される所業なのか??

とまあ、「ふくすけ」を見終わった午後6時。
まだ明るい梅田を通りながら、芝居とは?などと考えておりました。
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さっ、次の芝居は、橋本治脚本、蜷川演出、鈴木慶一音楽の「ボクの四谷怪談」です!
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by fenmania | 2012-09-20 20:28 | 映画・演劇

舞台「海辺のカフカ」観て来ました。

村上作品、ことに長編は多分全部読んでると思う、プチ春樹ニストです。
もちろん村上作品の中でも好き嫌いはあって、一番有名な「ノルウエーの森」は
正直、かなり嫌いな作品なんですが、
この「海辺のカフカ」は、お気に入りの部類に入ります。
その作品を、日本人が初めて舞台化するとあっては、見に行かざるを得ない。
それがちょっと苦手な蜷川幸雄であってもだーー070.gif


主人公のカフカに、映画「誰も知らない」でカンヌ最優秀男優賞を14歳で獲得した柳楽優弥。
カフカが逃亡した先、高松市で出会う2人の人物に
「セカンドバージン」でブレークした長谷川博己と、お久しぶりねの田中裕子。
登場時間は短いものの、カフカを助ける重要な役割の女性に佐藤江梨子。


第二次世界大戦下の疎開地、東京都中野区野方、そして四国の高松市が
村上氏得意のパラレルワールドとなって収束したり拡散したり、
重なりあって影響しあったりしていきます。
この「パラレル」を視覚化するのが、舞台上にいくつも配置されたアクリルケース。
人が入って演技できるくらいの大きさのアクリルケースですが、
片方の箱でカフカがひとりモノローグすれば、
もう片方ではそれに呼応する(と思われる)血と暴力で満ちた世界が進行していく。
一種難解な「カフカ」の世界観を、とっつきやすく演出していたと思います。

ストーリーは難解だから(2行や3行では書ききれない長編だし)パス!しますが、
この本の中で私が一番好きな登場人物である、猫と話せる老人「ナカタさん」が
すごく愛情深く描かれていて、うれしかったです。
この「猫とナカタさん」は、カフカにとって、
右と左、原因と結果、意志と行動、みたいに連動しあっている「ナニカ」なのでしょう。
それにしても、「猫」が舞台上でほんとうに「猫(の着ぐるみ)」だったのにはちょっと驚いたぞ!
蜷川さんなら、舞台上に何も出さなくても「猫」を具現化する手法を持ってそうなのに、
これですよ、これ!!
  ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
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村上作品のような一種「ファンタジー」ともいえる作品世界を視覚化するのは
ほんとうに大変だと思う。
それとともに、目で追う「文字言葉」でなく、「せりふ」として聴神経を刺激することで、
初めてがっつりと抱え込め、得心できる世界観もある。
小説を舞台や映画化することの役割って、そういうことなんじゃないかと思うのです。


さてさて次の舞台は、
こちら!
大人計画の「ふくすけ」! 9月です!
古田さん、あべさだちゃん、待ってますよ~~~053.gif
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by fenmania | 2012-07-01 19:06 | 映画・演劇

「レンタネコ」観に行きました。

「かもめ食堂」「めがね」「トイレット」。
いわゆる「ほっこり系」の映画を撮らせたらこの人、という
荻上直子監督の新作。
とにかく「オギガミ」と「ネコ映画」というだけで、
私には珍しく、公開1週間以内に観に行った映画でした。
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これの評価は難しいなあ・・・。
ネコが、それも血統書つきでもなく、演技するでもない「Cクラス」のネコズが
ただうろうろと家の中をうろついていたり、
ぐっすと寝込んでたりしているのを、ぼおっと見ているだけでニタニタしてしまう、
ただのネコ馬鹿なもんだから、わたし。
「ネコ、可愛いから、すべて許す!」となってしまう。
ネコ好きじゃないひとにはどう見えるのかなあ・・・? 不明。

「かもめ食堂」みたいな凛とした空気感はないし、
「トイレット」みたいなプチ感動もない。
まあ、「めがね」の島のだらだら感に近いかも?

一応「事件」らしきものは起こるんだけど、
なんだか見てるうちに、できごとが平坦にならされてしまって、
しかも設定が盛夏なので、人も猫もだらだらになってて、
超弩級のまったりズムが充満してます。

ふっるい日本家屋に多数のネコと住み、
リヤカーにネコを乗せ、拡声器で「レンタ~ネコ」と連呼しながら川辺をながす
レンタネコ屋の主人、サヨコ役の市川実日子ちゃんは、割とよかったです。
ぬーっと背が高くて、身体に凹凸のないビジュアルが、
この映画にぴったりでした。

なんといってもネコです、ねこ! 猫!!
前回までのようにおいしそうな食べ物も、きれいな風景も、
まーーーたく出てこない分、
すべての「癒し」はネコが請け負っています。

ネコ以外で、私が気に入ったのは、
不思議ちゃん系の主人公、サヨコが、
単なる不思議ちゃんではなく、
きちんと他人と関わろう、関わりたいとしているところ。
何せ、壁に貼ってある目標が、「今年中に結婚する」「上下15歳以内は許容範囲」
なのですから・・・・。いいなあ049.gif

後は、私の苦手なもたいまさこさんが出なかったのもちょっとうれしかった(苦笑)
あの、何かたくらんでる系の不遜な笑顔が嫌いなの・・・。

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by fenmania | 2012-05-19 19:56 | 映画・演劇

シレンとラギ@劇団☆新感線

先週、新感線の新作「シレンとラギ」を観て来ました。
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じつはわたくし、新感線のファンクラブに入っております。
ファンクラブ枠でのチケット先行予約ができるはずだったのに、
・・・・・・・・申し込むのをすっかり忘れてた057.gif
あわてて2次先行にすべりこみ。
2次だったからか、後ろの方のあまりよくない席で、
せっかくこのために年会費を払っておきながら、こんな大事なことを忘れるなんて、
ばかばかわたし・・・・な気分でした・・・。

以下、お芝居のネタバレを含みますので、
未見のかたはお気をつけくださいね。


      +++++++++++


脚本の中島かずきさんだったかが事前インタビューで
「これまでの新感線の中で一番重いお話。
ギリシャ悲劇のような壮大な恋愛劇」・・・という形容をしてたけど、
ギリシャ悲劇というと、国の盛衰を賭けた壮大な不倫ものか、
どろどろの近親相姦ものしかないやん!(私の知識ではこんなもの)
・・・と思っていたら、やはり後者のお話でありました。

暗殺者シレン(永作博美ちゃん)と若い武芸者ラギ(藤原竜也君)は
当人たちは知らなかったものの、ほんとうは実の親子。
この2人の愛憎を核に、「北の国」と「南の国」の支配権をめぐって、
宗教、戦争、殺戮、陰謀・・・・だましだまされ、殺し殺される、めくりめく新感線ワールド。

「北」と「南」というと、すぐに隣国を思いますが、
モチーフは日本の南北朝なのだそう。

主演はもちろんこの2人だけれど、
ラギの父親のキョウゴクを演じる古田新太、
ラギの実父である、南の国の支配者ゴダイを演じる高橋克実、
このふたりのおやじが、さすがの安定感で、すばらしかった!
特に高橋さん。テレビではちょっとはげたひょうきんなおっちゃん、というキャラばかりだけど、
赤い法衣をまとって宗教的な力で南の国を支配する、ダークな為政者役が絵になるったら!

また、いかにもお金がかかってそうなw舞台美術も毎回楽しみにしてます。
前回の「髑髏城の七人」は比較的シンプルな舞台装置だったのですが、
今回は、回り舞台で場面チェンジ。
さらには1幕のラスではト、ゴージャスな花吹雪で舞台を覆ってしまう演出には息を呑みました。

ただ、全体の印象としては、「重い話」という割には、
淡々と話が進んでいった気もするのです。
もうちょっと何とかなりませんでしたか、天才中島さん。という気持ちでいっぱいです。

新感線は、06年の「メタルマクベス」が初見。
その後「朧の森にすむ鬼」「五右衛門ロック」「蜉蝣峠」「蛮幽鬼」
「薔薇とサムライ」「髑髏城の七人」と、今回が都合8本目。
なかでいちばん衝撃的だったのは、
市川染五郎が完全なヒール役を演じた「朧の森にすむ鬼」でした。

次回作は年末から来年2月にかけて公演の
「五右衛門ロックⅢ-ZIPANG PUNK」と発表されました!
五右衛門ロックなら、いとしのふるちん(古田新太)が主演だな~と、
いまからわくわく010.gif
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by fenmania | 2012-05-13 19:23 | 映画・演劇

「ステキな金縛り」観て来ました。

先週の日曜日、三谷幸喜作品の「ステキな金縛り」観て来ました。
三谷監督の作品は、映画は全部観てるし、
舞台も(こちらはほとんどテレビでですが)「オケピ!」「彦馬が行く」
「バッドニュースグッドタイミング」「コンフィダント」「決闘!高田馬場」などなど・・・、
いっぱい見てるがまだまだ多作で追いついていけてない(笑)

そのなかでも今回の「ステキな金縛り」は、もしかして一番笑ってほろっとした作品かもしれません。
ストーリーはかなり番宣で知られているでしょうが、
もう後がない3流弁護士(深津絵里」が、担当する殺人事件の証人として
落ち武者の幽霊(西田敏行)を立てようと奮闘し、
お堅い検事(中井貴一)と法廷で対峙する・・・というもの。

深津絵里の無垢なダメっぷりもかわいいし
科学信奉者でオカルト大嫌いな頭の固い(しかし、実はある秘密が!!?)の中井貴一も楽しい!
でもやっぱりこの映画は西田敏行でしょう。
もう、水を得た魚のように思いっきりうれしそうにいきいきと演じてるのが、
スクリーンを通してよく分かります。
楽しくて、アドリブなんかもガンガンいっちゃうぜ!な感じがめっちゃかわいい。
西田敏行見るためにもう一回見てもいいなあ、と思うほどです。
いつものごとく、有名な俳優さん(佐藤浩市、唐沢寿之、篠原涼子など)が
綺羅星のごとくワンシーンだけで使い捨てられ(笑)
全く贅沢というか、三谷作品ならこんな使い方をされても出たいと思わせるチカラ技はさすがです。
美術は私の尊敬する種田陽平さん。
また、監督は、中井・検事を『奥さんに逃げられ、最愛のペットにも死なれた男』
として描いていますが、
これってマンマ三谷さん自身じゃん、とちょっとびっくりしました。
あまり自分をさらける人ではないと思っていたので・・・。

さて、三谷監督は自分の好きな映画のオマージュに自作品を使うことで知られているようです。
「ようです」というのは、私は、三谷監督が好む古い洋画をほとんど見ていないので
気がつかないからです。
今回も多分いろいろな映画のオマージュシーンがあると思うのですが、
全く分からず残念です。
あ、1つだけ、「これって『時をかける少女』?」と思ったシーンがありましたが、
多分違うんだろうな。
『ステキな金縛り』、お勧めです!上映時間2時間22分。
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by fenmania | 2011-11-11 11:49 | 映画・演劇

酷評紛々の『アンフェア』観ました

ヤフーの映画レビュー欄ではぼっこぼこに酷評されてる『アンフェア』ですが、
佐藤浩市、山田孝之、寺島進、あべさだちゃんが出ると来れば観ないわけにはいかないw
テレビドラマの『アンフェア』も、映画化第1弾も観ておらず、
『アンフェア』なるものがどういうものかまったく無知のままに(篠原涼子が刑事、という知識のみ)
ロードショー初日に観に行きました。

ヤフー評で何が不評だったかというと、
「カーアクションや爆破シーンなどがちゃち過ぎる(海外映画と比べて)」
「テレビドラマが秀逸なストーリー展開だったのに、映画は脚本がひどすぎる」
「グロいシーンが多すぎる」
・・・・というものが多かったのですが、
私はハリウッド映画をまったく観ないのでそれとの比較はできず、
テレビドラマのほうも観てないので、それと比べようもない。
まあ~、何かと比較しない(できない)っていうのはラクなことなのね~としみじみ思いましたねw
あと、「グロい、血が出る、人が殺される」、というシーンが結構だめな私でも
この映画はほとんど目をそらさずに観れましたよ。
これがグロすぎると感じる人は、どんな純粋培養の映画ばかり観てるねん。

篠原涼子ちゃん、うつくしぃ。何だ、この目力は。
佐藤浩市もうつくしぃよ。冒頭の二人のラブシーン、うーーん、貫禄だ!
山田孝之は近年「危ない」役柄が多く、この映画でも、「いつどこで豹変するんだ!」と
どきどきしながら観てましたw

まあ、主役の雪平を演じる篠原涼子の美しさがこの映画のキモですな。
もしかして、彼女以外の女性はまったく出てこなかったのでは?
ストーリーが進むに連れて雪平は、元夫(香川照之)の殺人容疑で警察に追われ、
さらに別の敵に命を狙われるはめになる。
こんな状況におかれたら、化粧する余裕なんかないし、
唇とかガサガサに荒れて、目の下にがっつりクマができるなんて
当然のこと。女性なら絶対感覚的に理解できる「顔の荒れ」を、
でかいスクリーンでさらした篠原もいさぎよいし、
それをリアルに表現した女性監督もいいなと思う。
追われる雪平もずたぼろだけどかっこいいよ。

先にも言ったように、篠原以外の女優が全く出てこず、
「警察の裏金疑惑」だとか、アクションやオカルト、ホラーの要素が充満してる、
一見男くさい『アンフェア』だけど、
これは女性による女性のための映画では?と思ったことでした。

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by fenmania | 2011-10-02 12:44 | 映画・演劇

「荒野に立つ」観てきました

長塚圭史さん作・演出・出演の「荒野に立つ」(@阿佐ヶ谷スパイダース」)を、
大阪ABCホールに観に行きました。
初めて行くABCホールは阪神福島駅から南方向に徒歩5分、なのですが、
ほとんど降りない福島駅、地下から地上に上がると同時に、東西南北が一瞬分からなくなり、
5分ほどその場で右往左往してしまいました。
地元神戸ではとにかく山が見えるのが北ですから、東西南北が分からなくなることがまったく無く、
それに慣れた身には、大阪エリアで地下から地上に上がった瞬間の
「方位が分からん!」感が苦手です。

さて、「荒野に立つ」。
例えば劇団★新感線などの分かりやすい活劇とは対極の、
非常に脳みそを使うお芝居でした。
あらすじをうまく説明できないほど(笑)。
観ている間中、「うおっ、どーゆーこと、どーゆーこと、意味分からん、これからどうなんの!」と
そればっかりがぐるぐる頭を回ってました。
と言ってつまらなかったかというと、そんなことは全然無く、
最後まで緊張感を保ちながら見通してしまいました。

主人公の朝緒の高校時代、大学時代、その後次々と起こる悲劇的な出来事・・・など、
彼女の生きてきたいろんな年代が、うす~~い層になって積み重なり、
しかもその層がくるりと反転したり、層と層がくっついて自由に行き来ができたり、
そんな世界観が炸裂している感じです。
『時は過去から未来に一方的に進んでいるのではない』ってか。

が、2時間10分、休憩なし、はちょっとつらかった。
しかも、ABCホールの椅子はかなり硬くて、途中からお尻が痛くなって・・・。
最後の40分くらいはかなりきつかったです・・・008.gif

さて、次の芝居は、年に1回のお楽しみ、劇団★新感線の「髑髏城の七人」!
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by fenmania | 2011-08-07 19:45 | 映画・演劇

「大鹿村騒動記」観ました~原田さんのこと

先日、原田芳雄さんの遺作、「大鹿村騒動記」観に行ってきました。

原田さんが70を過ぎて初めて自らの企画での主演映画。
なのに、全然、気負いや力みを感じない、軽妙ですが味わい深い演技に拍手。
実は、この映画、原田さんの逝去とごっちゃになって、
楽しくて、はかなくて、悲しくて、こっけいで、
なんと感想を言ったら良いのか分からなくて
しばらくブログを書けませんでした。
でも、1個だけ言うなら、『いい映画です。皆さんに観て欲しい』。

主演の原田さんはもちろん、
大楠道代、岸部一徳、石橋連司、小野武彦、佐藤浩市、松たか子などの
手馴れたベテラン勢にくわえ、
瑛太、冨浦智嗣の若手がとってものびのび、楽しそうに演じてる。
そして舞台は、戦争などの度重なる危機を乗り越えて、
300年間村歌舞伎を伝承してきた大鹿村。
この大鹿村がね、もう美しいの。
THE 日本 といいたくなるくらいの自然美にあふれた土地。
そこでばたばたと繰り広げられるリアルでユーモラスな人間劇と、
板の上で演じる歌舞伎というフィクションが交錯して、
その中で、次第に、それぞれの人間の素直な気持ちがあらわになっていきます。
「生きてる」ってことを、真正面からがっつり、ではなく、
ちょっと横っちょ、あるいは遠目から見せてくれる映画でした。
三國連太郎さんがいいなあ。
風呂敷包みを持ち、腰を曲げて田舎道を歩く三國さん、
神々しいほどでした。
ラストシーンに流れるキヨシローの歌にまたぐっと来ます。
この映画は1000円で観れます!皆さんに観て欲しいです。
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で、原田さん。
1980年作の「ツィゴイネルワイゼン」で頭と心を滅多打ちされました。
同じ鈴木清順監督、松田優作主演の「陽炎座」とともに、
えぐられるように「美意識」という言葉を実感した映画でした。
1990年の「われに撃つ用意あり」は若松孝二監督作。
盟友桃井かおりとの息のあったハードボイルド、
作品はB級かなあと思ったのですが、
ラストシーンが衝撃的で、いまだに好きな(というかインパクトが残る)映画です。

あと、原田さんの歌うブルースが好きで、
三宮のチキンジョージ(だったと思う)でのライブに何度か行きました。
あるときは、ライブが終わってから、北野のジャズの店「ソネ」に立ち寄ったら、
そこに原田さんとスタッフの方、それに女優の栗原小巻さんが来られてて、
トイレの前で原田さんとすれ違って、びっくりして固まってしまった記憶が・・・。

原田芳雄さんのご冥福をお祈りいたします。
が・・・・、これが最後の映画だなんて、悲しすぎる!!!!
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by fenmania | 2011-07-29 11:23 | 映画・演劇

「コクリコ坂から」観て来ました。

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「観たい映画リスト」にまったく入っていなかった「コクリコ坂から」ですが、
人に(半ば拉致されるようにw)誘われて、昨日観に行ってきました。
思えば、ジブリ映画をスクリーンで観るのって初めてです。

そんなですから、ストーリーもまったくノーチェック。
前知識0%での鑑賞です。
東京オリンピックを翌年に控えた1963年の横浜を舞台に、
けなげな下宿屋の長女・海と、新聞部の編集長で熱血もて男の俊をめぐる、
熱い青春と純な初恋の物語。

この映画の、何に目を奪われるか、ってのは人それぞれに違うと思う。
「三丁目の夕日」みたいなレトロな暮らしぶりを珍しいと思う人もいるだろうし、
登場するすべての高校生たちの純粋さに目を見張る人もいると思う。
二人のまっすぐに相手を思いあう真心に胸きゅんする人も多いのかな。

二人の通う高校の、文化部が集う魔窟のような古い洋館「カルチェラタン」の
取り壊しをめぐる高校生たちのやりとりがやたら熱い。
俊の作る学生新聞は、取り壊しを画策する学校側に断固として物申している。

ああ、こういう時代がたしかにあった、とかすかな記憶が私の中にもあります。
私の通っていた公立高校、服装は自由で、
私自身もかろうじて1年のときは制服(強制ではないので「標準服」と呼んでいた)を
着用していたが、2年以降はずっとジーパン(当時はそう言ってた)にTシャツという
軽装で登校していました。
で、この服装の自由も、我々の何世代も前の先輩たちが
「服装自由化」を旗印に学校側と強くぶつかり、
粘り強い交渉の末に勝ち取ってくれた「権利」であると、
世代を経て私たちは申し渡されてきました。
「権利」であるからには、それを無にしちゃいけない、
きちんと連綿と後輩たちに伝えていかないと、と、
私自身、小言を言う母親を向こうに回し、
頑張って私服を着て通っていたという面も、わずかながら確かにあります。

私たちの学年になっても、新聞部はやはり「カルチェラタン」と呼ぶにふさわしく、
学生側からの「異議申し立て」の巣窟であり、
私のようなパンピーの目には少しく怖いような男子女子たちが
新聞部の部室に巣食っていたもんです。
携帯電話やパソコンのない、ある意味牧歌的な時代でした。

「コクリコ坂から」は、ある程度の年齢以上の鑑賞者の、
どこかに置き忘れてきた何かを刺激する。
それはノスタルジーではない、ある種の軽い痛みを伴うかもしれない。
そして、若い人には、「『熱いこと』『礼儀正しいこと』はかっこ悪いことではない」
という意識をちらりとでも持てるといいなと思う。
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by fenmania | 2011-07-18 15:49 | 映画・演劇

「マイ・バック・ページ」観ました

水曜日に観にいって来ました。
原作者である評論家の川本三郎さんの実体験をベースにした映画です。
ある過激派運動家・梅山(松ケン)と、彼が引き起こした自衛官殺人事件。
それに自ら前のめりに関わってしまう新米ジャーナリスト・沢田(妻夫木)を描いた映画です。

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観客はほとんどがオーバー45歳くらい?
幼い記憶とはいえ、60年代後半の全共闘運動や、
それに続く悲惨な浅間山荘事件などを覚えている人、
身の中に闘争の記憶(それが赤の他人の、あるいはテレビの中の映像としてでも)が
埋もれている人が多いのではと推察。
(どうでもいいが、「浅間山荘事件」と打つと、「浅間さん掃除権」と表示する、
windows7くん。キミも若いなあ・・・)

いろいろな解説を読むと、
「あの熱い政治の時代、改革の時代」に乗り遅れまいとあがく
二人の若者・・・みたいな書かれ方をしているけど、
「自称」活動家の梅山にはその無軌道な純真さを感じることができず、
自己顕示欲のみで生きる口八丁の梅山に手も無くだまされるおばかな勇み足のジャーナリスト、
という構図に見えてしまった。
それでも、多分、それが珍しくもない「時代」だったのだろう。
多分、私がその時代に若者として生きていたら、
仲間や雰囲気に引きずられるように行動していただろう。
もしかしたら生きていられたかどうかも分からない。
傍観者であることを許さない、そんな時代の風。

余談ですが、その時代の真っ只中にいながら、徹底してその風を拒絶した代表者が
村上春樹とユニクロの柳井さん。どちらも成功者だ。
映画の中では長塚圭史さんが演じる東大全共闘議長(長塚さんが秀逸で、出番はごく少ないけど、私は涙した・・・)
であった山本義隆氏、
かれはものすごい理系の秀才であったらしい。
この時代でなければノーベル賞も夢ではない、というくらいに。
それもこれも、時代の巡りあわせだ。
戦争にあわなかったこと。震災にあわなかったこと。
殺人にあわなかったこと。事故にあわなかったこと。
すべてが時代のめぐり合わせであったとしたら、
偶然の地平で人が生きる価値は、何なのでしょうか?

・・・とまあこんなことをつらつら考えさせられた映画でした。
さらに、平成生まれの若い人は、この映画はよく分からないのではないかと
独断で思っています。
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by fenmania | 2011-06-04 11:05 | 映画・演劇