「海炭市叙景」観ました

先日ブログで紹介した小説、「海炭市叙景」(こちら→★)を映画化した作品を、
やっと観てきました。
場所は大阪・十三の「第七芸術劇場」というミニシアター。


小説は良かった。でも映画はどうだ・・?

・・・という気持ちで観に行ったのですが・・・・。
いやあ・・・、ものすごく良かったです。
胸がフルフルするような気持ちが、今も続いています。

函館生まれの作家による、函館を舞台にした小説。
20年以上前に書かれ、作家の自殺によって未完となり、
その後日の目を見ることもなかったこの小説を、
函館でミニシアターを営む男性が見出し、
地元を舞台に有志の手で映画化しようと決意します。
帯広出身の熊切監督とおおぜいの函館市民の協力で、
1年半をかけてできたのがこの映画です。

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(以下、ストーリーのネタばれを含みますので、ご注意ください)

造船会社をリストラされる兄妹がいる。失意の兄を不安げに見守る妹。
二人きりで貧しくささやかに生きる兄妹の暮らしを縦軸に、
それと交差する、幾組かの市井の人々の孤独な暮らしを通して、
地方経済の没落や、不安定な家族の絆を、ほぼノーナレーションで描いています。
会話の量も少なく、観客はスクリーンの中の人たちの表情や行動を通して
彼ら彼女らの孤独の深さを知るのみです。

原本の小説では、もちろん登場人物の気持ちや背景が言葉で書かれているのですが、
映画ではそういう説明的なところはほとんどない。
雪の降り積もる地方都市の、疲弊した人々の暮らしを、
粗く、しーんとしたタッチで残酷なまでに淡々と描いています。

「救いがない」。
まさしくそんな映画。
けれど、そんな痛みのなかで、一瞬ふうっと、
マッチの炎のようなほのかな温かみを感じるシーンがいくつかあって。
私は、義母に虐待される少年を気遣う、地味な事務員の女性の視線に
ものすごい救いを感じました。
また、孕んで戻ってきた猫の「グレ」にも・・・。

「孤独の中で生きる」ことの痛みと、
「人は人に何ができるのだろう」という命題を
この映画からもらった気がします。
あと、音楽がすばらしいです。

ミニシアターでしか上映されない映画ですが、
もしご覧になる機会があれば、ぜひお勧めします。
高槻セレクトシネマ、神戸の新開地アートビレッジセンターで3月から上映されます。
予告編はこちらで→★
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by fenmania | 2011-02-03 17:27 | 映画・演劇